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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(れ)14号 判決 1954年12月07日

本籍

長野県上田市中之条七二番地

住居

右同所

工員

中沢貞夫

大正一四年二月六日生

本籍

長野県小県郡塩尻村大字上塩尻二六番地

住居

東京都港区芝新橋七丁目一二番地

会社員

富岡隆

明治四二年一二月七日生

右中沢貞夫に対する不法監禁・住居侵入・富岡隆に対する不法監禁各被告事件について昭和二六年七月一四日東京高等裁判所の言渡した判決に対し、被告人から各上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人両名の弁護人小沢茂、同佐伯市静治の上告趣意は末尾添付別紙記載のとおりである。

同上告趣意について。

憲法は勤労者の団結権、団体交渉権、その他の団体行動権を保障しているが、この保障もかかる勤労者の権利の無制限な行使を許容し、それが国民の平等権、自由権、財産権等の基本的人権に優位することを是認するものではなく、従つて勤労者が労働争議において使用者側の自由意思を剥奪し又は極度に抑圧するような行為をすることを許すものではない。(昭和二三年(れ)第一〇四九号同二五年一一月一五日大法廷判決集四巻一一号二二五七頁以下参照)。

そして労働組合法(昭和二四年法律第一七四号による改正前のもの)一条二項の規定は同条一項の目的達成のためにした正当な行為についてのみ刑法三五条の適用を認めたに過ぎず、勤労者の団体交渉においても、刑法所定の暴行罪又は脅迫罪にあたる行為か行われた場合にまで、その適用を定めたものでないと解すべきことは当裁判所大法廷の判例(昭和二二年(れ)三一九号同二四年五月一八日宣告、集三巻六号七七二頁参照)とするところである。

原判決の認定した本件事実によれば、被告人両名は判示会社工場次長河合次男外四名の同会社幹部に対し、寄宿舎止宿工員は一応帰郷することを勧告することなどを含む会社の通告の撤回及び団体交渉の開催方を要求した際、原審相被告人小池充等と共同して、同会社構内バレーコートにおいて、徹宵十数時間にわたり引続き右河合次男等の自由を拘束して不法に監禁し。また、被告人中沢貞夫は、さらに右相被告人小池充等と共同して、夜間同会社工場長吉岡英雄方の屋内に居住者の意思に反して侵入し、同所から退去を求められてもこれに応じなかつたというのであつて、かかる被告人両名の所為が労働組合法一条一項の目的達成のためにする正当行為であると認めることができないことは前記判例の趣旨に徴し明らかである。

されば原判決には所論のような違法はなく、論旨は採用することができない。

なお記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。よつて刑訴施行法三条の二、刑訴四〇八条に従い全裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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